
この銘柄、まずは"分析"からいっしょに見ていきましょう。
事業と業績までを無料で公開しています。バリュエーションと"結論"パートは、筆者の個人用メモとして非公開にしています。
1. サマリー
AbbVie(ABBV)は、Humira(アダリムマブ)のバイオシミラー侵食という製薬業界最大級の特許の崖を、後継免疫抗炎症剤 Skyrizi(スキリージ) と Rinvoq(リンボック) の2枚看板でほぼ完全に乗り越えつつある。Skyrizi は四半期単独で $5.5B(+24%)、Rinvoq は $2.5B(+23.7%) に達し、この2剤合計は既に Humira のピーク時売上を上回る。免疫のみならず神経科学(Vraylar/Botox治療/Ubrelvy/Qulipta)が四半期 $3.2B(+約20%) と第2の成長エンジンに育っている点も心強い。
一方でバランスシート上は 株主資本がマイナス(2026-06-30 で $-5,935M) であり、これは Allergan 買収(2020年、約$630億)に伴う多額の自社株償却・のれん・無形資産と継続的な大型配当・自社株買いの帰結である。これは会計上の負債超過ではなく、製薬大手にしばしば見られる資本構成の特徴だが、追加M&A(今回の Apogee $10.9B を含む)を重ねるほどレバレッジ管理の重要性は増す。オンコロジー($1.6B、-2.4%)とアステティックス/美容($1.3B、-0.9%)は横ばい〜微減で、成長の牽引はあくまで免疫+神経科学に集中している。Humira は $756M(-36%)へ縮小したが、絶対水準の低下により今後の下押し圧力は逓減する局面に入った。
配当は年 $6.92(利回り約2.77%)、53年連続増配のディビデンド・アリストクラットであり、インカム妙味も厚い。
2. 事業概要と競争優位(SWOT)
事業構成(2026年Q2ベース): 免疫(Immunology)$8.8B が全体の過半を占める中核。内訳は Skyrizi $5.5B、Rinvoq $2.5B、Humira $756M。次いで神経科学 $3.2B、オンコロジー $1.6B(Imbruvica/Venclexta/Epkinly 等)、美容 $1.3B(Botox美容/Juvederm)。地理的には米国が売上の中心。
競争優位の源泉:
- 免疫抗炎症のフランチャイズ支配力: 乾癬・乾癬性関節炎・炎症性腸疾患(IBD: 潰瘍性大腸炎・クローン病)・関節リウマチ等の広範な適応症で、Skyrizi/Rinvoq が新規患者導入シェアのリーダー。IBD領域では J&J(Tremfya/Stelara)と激しく競合するも、シェアを維持・拡大。
- 適応症拡大による長い成長滑走路: Rinvoq は白斑・円形脱毛症(欧州承認)等へ適応拡大し、これら新適応だけでピーク売上 約$2B が見込まれる。
- 神経科学の多角化: Vraylar(双極性・うつ)、Botox治療(片頭痛・痙縮)、Ubrelvy/Qulipta(片頭痛)で、免疫依存を分散。
- キャッシュ創出力と資本還元: 53年連続増配、潤沢なFCFによる配当+自社株買い+機動的M&A。
SWOT
Strengths(強み)
- Skyrizi/Rinvoq 二枚看板が合計で四半期 $8.0B 超、両剤とも +24%前後の高成長。Humira ピークを既に凌駕
- 免疫・神経科学の二本柱化で単一薬依存を低減
- 53年連続増配・利回り約2.77%・厚いFCF
- 二桁の営業成長を維持しつつ通期ガイダンスを連続引き上げ
Weaknesses(弱み)
- 株主資本マイナス($-5,935M)=Allergan買収由来の重い無形資産・のれんと積極還元の帰結。財務レバレッジ高め
- オンコロジー・美容が横ばい〜微減で成長ドライバーになれていない
- Imbruvica 等旧オンコロジー資産の緩やかな衰退
Opportunities(機会)
- Skyrizi/Rinvoq を「市場が過小評価している」と会社が明言するピーク売上余地(各フランチャイズ)
- Apogee 買収($10.9B)でアトピー性皮膚炎向け長時間作用型生物製剤 zumilokibart を獲得、次世代免疫パイプライン強化
- 神経科学・ADC(オンコロジー次世代)・肥満/代謝領域への布石
Threats(脅威)
- Skyrizi/Rinvoq 自身の将来的な特許切れ(2030年代前半以降)=「次の崖」への備え
- IBD/免疫での J&J・Lilly 等との激しい適応症・シェア競争
- 米国の薬価改革(IRA価格交渉、MFN型施策)による価格圧力
- 大型M&A連発によるレバレッジ悪化・統合リスク・希薄化
3. 直近業績(SEC EDGAR確定値ベース)
以下はすべて SEC XBRL 一次データ(締め日 end アンカー)。GAAP値。調整後EPSは会社開示・メディア値として併記。
| 指標(GAAP) | Q2 2026<br>(04-01〜06-30) | Q1 2026<br>(01-01〜03-31) | Q2 2025<br>(前年同期) | FY2025 通期 |
|---|---|---|---|---|
| 売上 | $16,990M | $15,002M | $15,423M | $61,160M |
| 営業利益 | $6,432M | $3,990M | $4,894M | $15,075M |
| 純利益 | $3,613M | $695M | $938M | $4,226M |
| 希薄化EPS(GAAP) | $2.03 | $0.39 | $0.52 | $2.36 |
ポイント:
- Q2 2026 売上は前年同期比 +10.2%($15,423M → $16,990M)、二桁成長を維持。
- 株主資本 $-5,935M(2026-06-30): Allergan 買収由来の資本構成。前四半期 $-6,656M から改善方向だが依然マイナス。総資産 $135,115M、現金 $6,569M。
- Skyrizi $5.5B(+24%)、Rinvoq $2.5B(+23.7%)、Humira $756M(-36%)、免疫合計 $8.8B(+14.6%)、神経科学 $3.2B(+20%)、オンコロジー $1.6B(-2.4%)、美容 $1.3B(-0.9%)。