
この銘柄、まずは"分析"からいっしょに見ていきましょう。
事業と業績までを無料で公開しています。バリュエーションと"結論"パートは、筆者の個人用メモとして非公開にしています。
1. サマリー
GE Vernova(GEV)は、2024年4月にゼネラル・エレクトリック(GE)から分離独立した電力機器・電力技術の専業メーカーである。事業は Power(ガス/水力/原子力タービン等)・Electrification(送配電・グリッド機器)・Wind(陸上・洋上風力) の3セグメントで構成され、世界の発電設備の約4分の1に自社技術が関与するインストールベースを持つ。分離から2年強を経て、同社は「脱炭素・電化・エネルギー安全保障」という構造的トレンドの中心に位置づけられ、特に AIデータセンターの爆発的な電力需要 の直接的な受益者として市場から評価されている。株価は分離時の$130前後から2026年8月には$1,063.25まで約8倍に上昇したが、これは株式分割ではなく、AI電力需要を背景とした実価格の上昇である。
直近の 2026年第2四半期(4-6月期) は、構造的追い風が数字に明確に表れた四半期となった。SEC EDGAR確定値で売上高$11,104M(前年同期$9,111Mから+22%)、純利益$668M、希薄化後EPS $2.47。より重要なのはフロー指標で、オーガニック受注が前年比+88%の$24.2B、受注残(バックログ)は過去最高の$176B に達した。ガスタービンのバックログ+スロット予約は四半期で100GWから116GWへ拡大し、通期で125GW以上を見込む。データセンター向け受注は年初来$5Bを突破し、2025年通年の2倍超のペースにある。バックログは2027年に$200Bへ到達する見通しである。
GEVのフォワードPERは約48〜65倍(情報源により差)と、同業のEaton(約31倍)、Siemens Energy(約24倍)を大きく上回り、AI電力テーマのプレミアムをすでに相当程度織り込んでいる。加えて Wind(風力)セグメントは依然として赤字 で、Q2はEBITDAマージン▲13.6%、損失$275Mへ拡大、通期でも約$400Mの赤字を見込む。以下では、EDGAR確定財務を土台に、強力な受注モメンタム・利益率改善・データセンター需要という上振れ材料と、高PERゆえの下方リスク・風力の構造赤字を両面から評価し、新規エントリー可否を判断する。
2. 事業内容と競争優位性
セグメント構成(2026 Q2 実績)
| セグメント | Q2売上 | セグメントEBITDAマージン | 位置づけ |
|---|---|---|---|
| Power(ガス/原子力/水力) | $5,477M | 18.8% | 収益の柱。ガスタービンで世界トップ級 |
| Electrification(グリッド・送変電) | $3,637M | 18.4% | 最速成長。データセンター電化の直接受益 |
| Wind(陸上・洋上風力) | $2,026M | (13.6)% | 構造赤字。通期▲$400M見込み |
競争優位性
- ガスタービンの寡占: 大型ガスタービン(HA級)で世界有数のシェア。設置後20-30年の保守・サービス契約が長期の高マージン収益を生む。データセンターの安定電源(ベースロード)としてガス火力の需要が再燃し、GEVは20GWの新規ガス機器を四半期で受注、ガスタービン年産能力を20GW(2026 Q3)→24GW(2028)→30GW(2030)へ拡張中。
- グリッド(送変電)の構造需要: AIデータセンター・電化・再エネ連系で送配電投資が世界的に加速。Electrificationセグメントが2桁マージンで最速成長。ソリッドステート変圧器や中電圧UPSの商用化でGW当たり収益が2-3倍に高まる余地。
- 原子力オプション: GE Vernova Hitachi の BWRX-300(SMR) は北米で唯一建設中のSMR。カナダで2030年末に商業運転開始予定、TVA(テネシー)でもDOEの$400M補助金を得て展開。現状の売上寄与は小さいが中長期の大きなオプション価値。
SWOT
Strengths(強み)
- ガスタービン世界寡占+巨大な保守インストールベース
- 過去最高の受注残$176B(≒2027年に$200B見通し)による収益可視性
- AIデータセンター電力需要の直接受益(Power+Electrification両輪)
Weaknesses(弱み)
- Wind(風力)の構造赤字(Q2 EBITDA▲$275M、通期▲$400M)。洋上風力のコスト超過・陸上の数量減
- 高バリュエーション(Fwd PER 約48-65倍)で失望に脆弱
- 大型プロジェクト依存の受注は四半期変動が大きい
Opportunities(機会)
- AI-DC電力需要の長期化とGW当たり収益単価の上昇
- SMR/原子力の実需化(BWRX-300の受注拡大)
- グリッド近代化・電化の世界的Capexサイクル
- 利益率改善(価格改定・ミックス改善・オペレーショナルレバレッジ)
Threats(脅威)
- AI設備投資サイクルの反転・データセンター需要の減速リスク
- Eaton/Siemens Energy/Mitsubishi Power等との競争激化
- 金利・資材・関税コスト、大型プロジェクトの執行リスク
- 高PER銘柄ゆえのマクロ調整局面での大幅ドローダウン
3. 直近業績(SEC EDGAR 確定値ベース)
四半期推移(売上・純利益・EPS)
| 四半期(締め日) | 売上高 | 営業利益 | 純利益 | 希薄化EPS |
|---|---|---|---|---|
| 2026-06-30(Q2'26) | $11,104M | $653M | $668M | $2.47 |
| 2026-03-31(Q1'26) | $9,339M | $179M | $4,745M | $17.44 |
| 2025-09-30(Q3'25) | $9,969M | $366M | $452M | $1.64 |
| 2025-06-30(Q2'25) | $9,111M | $378M | $514M | $1.86 |
| 2025-03-31(Q1'25) | $8,032M | $43M | $254M | $0.91 |
通期推移
| 通期(締め日) | 売上高 | 営業利益 | 純利益 | 希薄化EPS |
|---|---|---|---|---|
| ~2025-12-31(FY2025) | $38,068M | $1,388M | $4,884M | $17.69 |
| ~2024-12-31(FY2024) | $34,935M | $471M | $1,552M | $5.58 |
| ~2023-12-31(FY2023) | $33,239M | $(923)M | $(438)M | $(1.60) |
ポイント(EDGAR確定値による読み解き):
- 売上成長の加速: Q2'26売上$11,104M は前年同期$9,111M比 +21.9%。通期でもFY2023 $33.2B → FY2024 $34.9B → FY2025 $38.1B と加速。
- 営業利益率の劇的改善: 営業利益はFY2023▲$923M → FY2024 $471M → FY2025 $1,388M と黒字転換・拡大。Q2'26は営業利益$653M(営業利益率5.9%)とQ1'26の$179Mから大きく改善。分離直後の低採算体質から脱却しつつある。
- 資産・資本: 総資産は2025-12-31 $63,016M → 2026-06-30 $80,800M へ拡大(前受金・バックログ関連の増加)。株主資本$11,957M。Q2のフリーキャッシュフローは$5,107M(前年同期$194M)と桁違いに増加し、受注→前受金の好循環がキャッシュ創出に直結している。