
この銘柄、まずは"分析"からいっしょに見ていきましょう。
事業と業績までを無料で公開しています。バリュエーションと"結論"パートは、筆者の個人用メモとして非公開にしています。
1. エグゼクティブサマリー
Taiwan Semiconductor Manufacturing(TSMC、ADR: TSM)は、世界の先端半導体製造を独占的に握るファウンドリの絶対王者である。2026年第2四半期(4-6月)決算は、市場予想を上回る記録的な内容となった。売上高は US$40.20 億ドル(NT$1,270.38 十億)で前年同期比 +36.0%、前四半期比 +12.0%。グロスマージンは 67.7%、営業利益率 60.3%、純利益率 55.6% と、製造業として例外的な高収益体質を維持した。ADR 換算の希薄化後 EPS は US$4.31(NT$27.25)で、純利益は前年同期比 +77.4% と爆発的に伸びた。AI/HPC 需要が牽引し、HPC プラットフォームは売上の 66-67% を占め、前四半期比で約 +20% 増と加速している。これは 6 月版レポート(分析時株価 $467.37)以降のリフレッシュであり、最新四半期のデータで再評価した結果、株価は調整した一方でファンダメンタルズはむしろ一段と強化されている。
この Capex 引き上げは、AI 顧客からの構造的需要と先端ノードの立ち上がり加速を根拠とする「攻めの投資」であり、需要見通しに対する経営陣の強い確信を示す。N2(2nm)はこの四半期に初めてウェハ売上の約 3% を占め、商業的貢献を開始した。N3(3nm)30%・N5(5nm)33% と合わせ、7nm 以下の先端プロセスが売上の 77% を占める。Apple を先頭に N2 顧客が続き、2nm 容量は月産 10 万枚規模へスケールする計画で、歩留まりは既に 80-90% で安定していると報じられている。
最大のリスクは、台湾集中リスクと米国の対中/対台関税政策、AI 設備投資サイクルの反動であり、これらをモニタリング KPI で管理しながら段階的に建てる戦略を推奨する。
2. 事業構造と競争優位
2-1. 事業構造
TSMC は自社製品を持たない純粋受託製造(ピュアファウンドリ)モデルで、Apple・NVIDIA・AMD・Broadcom・Qualcomm など世界の主要半導体設計企業(ファブレス)およびインテグレーテッド企業の先端チップを製造する。売上構成は以下の通り(2026年Q2):
- プラットフォーム別: HPC(AI データセンター含む)66-67%、スマートフォン ~22%、IoT 5%、自動車 4%、デジタル民生 1%
- プロセス別(ウェハ売上): N2(2nm)~3%、N3(3nm)30%、N5(5nm)33%、7nm 以下の先端合計 77%
かつてスマホが最大セグメントだったが、2025-2026 年にかけて AI/HPC が構造的に逆転し、成長ドライバーが「スマホの買い替えサイクル」から「AI アクセラレータの設備投資サイクル」へシフトした点が最大の変化である。
2-2. SWOT 分析
Strengths(強み)
- 先端プロセス(7nm 以下)で世界シェア 90% 超、ファウンドリ全体でも 72.3%(2026 Q1)の圧倒的支配力
- グロスマージン 67.7%・営業利益率 60.3% という製造業として異例の収益性(プライシングパワーの証明)
- CoWoS 等の先端パッケージング能力が AI アクセラレータのボトルネックを握る
- N2/N3 で歩留まり 80-90% を確立し、技術・製造ノウハウで Samsung/Intel を数年リード
Weaknesses(弱み)
- 生産の大半が台湾に地理的集中(単一地域リスク)
- 少数の巨大顧客(Apple・NVIDIA)への売上依存度が高い
Opportunities(機会)
- AI/HPC 需要の構造的拡大(AI 関連売上は 2027 年に US$30B 超へ)
- N2/A16 世代への移行で ASP(平均販売単価)上昇余地
- 米国・日本・欧州でのファブ多角化による地政学プレミアム獲得と関税回避
- 先端パッケージング(CoWoS/SoIC)の能力拡張による付加価値取り込み
Threats(脅威)
- 台湾海峡の地政学リスク(中国による封鎖・侵攻シナリオ)
- 米国の対台/対中関税政策(32% 関税・米国内調達義務・非準拠 100% 関税の圧力)
- AI 設備投資サイクルの反動・在庫調整
- 為替変動(NT$ 高は米ドル建て利益率を圧迫)
- Intel 18A・Samsung SF2 の追い上げ(現状は数年遅れだが長期的競争要因)
3. 直近業績とファンダメンタルズ
3-1. 2026年 第2四半期(4-6月)実績
| 指標 | 2026 Q2 実績 | 前年同期比 | 前四半期比 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | US$40.20B(NT$1,270.38B) | +36.0% | +12.0% |
| グロスマージン | 67.7% | — | — |
| 営業利益率 | 60.3% | — | — |
| 純利益率 | 55.6% | — | — |
| 純利益 | NT$706.56B | +77.4% | +23.4% |
| 希薄化後 EPS | US$4.31/ADR(NT$27.25) | — | — |
3-2. 月次売上トレンド
- 2026年7月: NT$467.58 十億(約 US$14.5B)、前年同月比 +44.7%、前月比 +5.6%(記録的高水準)
- 2026年 1-7月累計: NT$2,872.06 十億、前年同期比 +37.0%
月次売上は加速基調が続いており、通期ガイダンス(+40% 強)の実現可能性を裏付けている。
3-3. 経営陣ガイダンス
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| Q3 2026 グロスマージン | 65〜67%(N2 立ち上げで 3-4pt 希薄化) |
| Q3 2026 営業利益率 | 56〜58% |
| 通期 2026 売上成長 | 米ドル建て「40% 強」(上方修正) |
3-4. ファンダメンタルズ指標(2026-08-14 時点)
- 時価総額: 約 US$1.94 兆(年初来 +86.7%)
- EPS(TTM): US$13.44(+53.4%)
- 売上(TTM): US$139.57B(+30.6%)
- 配当利回り: 0.65%(年間配当 $2.76/ADR)
- 2026 通期 EPS コンセンサス: 約 US$15.91(+49% 前後)
Capex 急増は短期的にはフリーキャッシュフローと減価償却を圧迫するが、AI 需要の構造的成長を前提とすれば、稼働率の高さと先端ノードの高 ASP により投資回収は堅い。マージンは N2 立ち上げで一時的に 3-4pt 希薄化するが、67% 台という絶対水準は依然として業界随一である。